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外側上顆炎は「テニス肘」とも呼ばれています。
しかし、実際に患者さんの傾向を調べた研究では、スポーツ別ではテニスが多い一方、職業別ではパソコンを使用する人が最も多く見られました。
このことから、外側上顆炎は腕をよく使うスポーツだけでなく、長時間のデスクワークなどによっても発症することがわかります。
※参考文献
加藤悌二ほか「上腕骨外側上顆炎2800肘の疫学的研究およびその本態に関する考察」(日本肘関節学会雑誌、2017年)
🔗https://www.jstage.jst.go.jp/article/jelbow/24/2/24_289/_article/-char/ja/
当院でも整形外科でテニス肘と診断された方や、診断は受けていないものの似た症状を訴える方に発症のきっかけや普段の生活習慣を伺うと、スポーツをしている方はそれほど多くなく、デスクワーク中心の方が多い印象です。

外側上顆炎は手首を反らす働きをもつ筋肉(手関節伸筋群)の腱が付着する部分で起こります。
ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが出現します。
外側上顆炎は「テニス肘」とも呼ばれていますが、必ずしもテニス選手に起こるものではなく、長時間のパソコン作業や手作業など、スポーツとは関係のない生活習慣の中で発症するケースが多く見られます。
長時間のキーボード操作やマウス操作では、手関節伸筋群が持続的に緊張し続ける状態となり、このような慢性的な負担の積み重ねが発症要因となります。

さまざまな研究で外側上顆炎の主な障害部位は、手関節伸筋群の中でも短橈側手根伸筋腱の付着部であるとされています。
この部分では炎症や腱の変性に加え、石灰化や腱の断裂、毛細血管の増生などが報告されており、痛みとの関連が指摘されています。
※参考文献
Tennis elbow—outcome following the Garden procedure: a retrospective study
🔗https://journals.healio.com/doi/10.3928/01477447-20180621-04?doi=10.3928%2F01477447-20180621-04
Extensor origin vascularity related to pain in patients with Tennis elbow
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16555106/
Arthroscopic treatment of lateral epicondylitis: clinical and cadaveric studies
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16205150/
上腕骨外側上顆炎診療ガイドライン2019 改訂第2版
🔗https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00521.pdf

研究では、肘を曲げて前腕を回内(手のひらを下に向ける動き)すると、手関節伸筋群のひとつである短橈側手根伸筋の腱にかかる負担が大きくなると報告されています。
特に前腕を回内し肘を15度曲げたとき、この腱が最も強く引き伸ばされるとされています。
つまり、肘を軽く曲げ、手のひらを下に向けてキーボードを操作するような姿勢は、外側上顆炎の方にとって負担がかかりやすい姿勢だと考えられます。
※参考文献
Anatomic Factors Related to the Cause of Tennis Elbow Journal of Bone and Joint Surgery, 89(9), 1955–1963.
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17768192/
Effect of Wrist and Finger Flexion in Relation to Strain on the Tendon Origin of the Extensor Carpi Radialis Brevis: A Cadaveric Study Simulating Stretching Exercises Clinical Biomechanics, 49, 1–7.
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28826010/


外側上顆炎の検査には、トムゼンテストや中指抵抗伸展テストなどがあります。
これらのテストは77〜100%の陽性率が報告されており、肘を伸ばして前腕を回内(手のひらを下に向ける)した状態では100%という報告もあります。
まず、これらのテストを行い本当に整体で対応してよい症状なのか、医療機関での検査や治療を優先すべきなのかを判断することを大切にしています。
※参考文献
上腕骨外側上顆炎における前腕肢位による手関節背屈抵抗テストの陽性率
🔗https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/jssh-journal/31-5.pdf

肘関節は上腕骨・橈骨・尺骨という3つの骨で構成されています。
これらの骨によって「腕尺関節」「腕橈関節」「近位橈尺関節」という3つの関節がつくられ、これらをまとめて「肘関節」と呼んでいます。
当院では、それぞれの関節にどのような機能の問題が起きているのかを評価します。
関節の可動域に制限がないか、押したときに痛みがあるか、左右差や周囲の組織の質感に違いがないかなどを確認します。
こうした評価を通して機能障害を見つけ、必要に応じて施術を行います。

前述のとおり、外側上顆炎には短橈側手根伸筋が深く関わっています。
短橈側手根伸筋は外側側副靱帯と連続しており、さらに回外筋や肘関節の前方関節包との連続性も報告されています。
つまり短橈側手根伸筋の周囲には、関節包や靱帯など比較的硬い組織が連続しているということです。
また前方関節包の付着部は幅が狭く、引っ張られる刺激に弱いため炎症が起こりやすいとされています。
そのため慢性的な外側上顆炎では、短橈側手根伸筋と関節包の間で炎症後の線維化(組織が硬くなる変化)が起こり、組織同士の滑りや伸びが悪くなっている可能性も考えられます。
当院では、このような組織の状態や周囲とのつながりも評価の対象としています。
※参考文献
短橈側手根伸筋腱の起始部における関節包の付着:外側上顆炎の発症要因に関する解剖学的研究 Nimura A, et al.(2014)
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24480683/
肘関節外側部の解剖学的所見 ―上腕骨外側上顆炎の病態に係る肘関節外側部の解剖学的所見について― 青木光広(2020)
🔗https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18888/se.0000001545

痛みは「結果」であり、その結果に至るまでには必ず「過程」があります。
多くの症状では、この「過程」にも目を向けなければ十分な改善は難しいと考えています。
身体の関節は互いに影響し合い、不足した動きを別の関節が補うことがあります。
例えば肩や手首の動きが何らかの原因で制限されると、その動きを肘が補おうとします。
その結果、肘に負担が集中し、外側上顆炎につながるケースがあります。
これは複数の歯車が連動して動く仕組みに似ています。
一つの歯車が止まったり引っかかったりすると、つながっているほかの歯車の動きにも影響が及びます。
人の身体も同じように、ある関節の機能が低下すると別の関節に負担がかかることがあります。
ここまでご紹介した内容は外側上顆炎に対する当院の基本的な考え方の一例です。
実際の身体の状態は一人ひとり異なるため、決まった方法で施術するのではなく、それぞれの状態に合わせて評価と施術を進めていきます。
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「外側上顆炎に対する短期間の手関節固定と理学療法の併用効果の比較」
Kachanathu SJ, et al.(2019)
European Journal of Physical and Rehabilitation Medicine
🔗https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30916527
外側上顆炎と診断された40名を対象に、理学療法の効果を検証した研究です。
参加者を2つのグループに分け、以下の治療を週3回、3週間実施しました。
治療前後の痛みの強さ、手首の可動域、握力を比較しました。
手関節の固定を併用したB群では、A群と比較して痛みの強さが統計学的に有意に改善しました。
また、手首の曲げ伸ばしの可動域や握力についても、B群でより良い改善が認められました。
外側上顆炎に対して、理学療法に短期間の手関節固定を組み合わせることは、痛みの軽減に有効であると報告されています。
ただし、手首の可動域や握力への効果については、さらなる研究が必要とされています。
この研究で注目したいのは肘の痛みに対して、肘だけでなく手首や前腕の筋肉にも働きかけている点です。
肘と手首は筋肉によってつながっており、物を持つ、握る、手首を動かすといった日常動作でも互いに影響し合っています。
そのため、肘の痛みを改善するには、痛む場所だけでなく、手首や前腕の筋肉にどのような負担がかかっているのかを確認することも大切だと考えています。
当院でも、こうした身体のつながりを踏まえ、肘周囲だけにとらわれず、肩や手首などの動きも含めて評価・施術を行っています。
※この研究は複数の理学療法と手関節固定の併用効果を検証したものであり、整体の個別の施術方法について効果を直接証明したものではありません。
「外側上顆炎に対する深部摩擦マッサージとステロイド注射の効果比較」
Yi R, et al.(2018)
HAND(New York)
🔗https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5755866/
外側上顆炎に対して、深部摩擦マッサージとステロイド注射の効果を比較した研究です。
研究では41名の患者が登録され、34名が初期評価に参加しました。
対象者を以下の3つのグループに分け、治療後の経過を比較しました。
治療開始から6〜12週間後と6か月後に、痛みの強さ、腕の機能、握力を評価しました。
6〜12週間後の評価では、すべてのグループで痛みの軽減が認められました。
一方、6か月後の評価では、深部摩擦マッサージを含む治療を受けたC群のみ、痛みの強さ、腕の機能、握力のすべてで統計学的に有意な改善が確認されました。
さらに、6か月後の評価では、C群はほかの2群と比較しても有意に良好な結果を示しました。
この研究では、深部摩擦マッサージを含む治療が、外側上顆炎の痛みや機能障害を改善する方法の一つとして有効である可能性が示されました。
研究者らは、ステロイド注射などの保存療法で十分な改善が得られなかった患者に対しても、治療の選択肢となり得ると結論づけています。
この研究で注目したいのは、外側上顆炎に対して、筋肉や腱に直接働きかける施術を含む治療が、症状の改善につながったという点です。
外側上顆炎は、肘の外側に付着する筋肉や腱に負担が集中することで起こります。
そのため、痛みのある部分だけでなく、そこにつながる筋肉の緊張や、手首・肘の動きを確認することが大切だと考えています。
当院でも前腕の筋肉や肘の関節を評価し、筋膜リリースや関節モビリゼーションなどを用いて、負担が集中している部分の機能改善を目指します。
さらに、肘の負担には肩や胸郭などの動きも関係すると考えているため、患部だけにとらわれず身体全体のつながりを確認しながら施術を行っています。
※本研究では局所麻酔や装具、ストレッチも併用しており、深部摩擦マッサージ単独の効果を証明したものではありません。また、6か月後の評価対象は17名と少なく、ほかの徒手療法や全身への施術にも同じ効果があるとは限りません。
谷口 綾
taniguchi ryo

痛みや不調を我慢せず、まずは一度ご相談ください。
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